
遺産と創造力、そして人口知能
各分野の専門家の総力を結集したポーランドパビリオンの空間芸術(インスタレーション)は、ポーランド人が受け継いできた創造の遺伝子を、来館者に触れ合いを通して五感で伝えます。ここでは自然、伝統、科学技術が織りなすこの不思議な空間を、来館者は体感するだけでなく共創することになります。
各分野の専門家の総力を結集したポーランドパビリオンの空間芸術(インスタレーション)は、ポーランド人が受け継いできた創造の遺伝子を、来館者に触れ合いを通して五感で伝えます。ここでは自然、伝統、科学技術が織りなすこの不思議な空間を、来館者は体感するだけでなく共創することになります。
展示企画は、KAFTIデザイン事務所のモニカ・ブラウンチュさん、GDYBYグループのエヴァ・キェルクロさんとスタニスワフ・ケンパさん、そしてヴィエスワフ・バルトコフスキさんが共同して担当されます。
KAFTI
GDYBY
Gdybyは、建築家のエヴァ・キエルコとスタニスワフ・ケンパによって設立されたデザインスタジオです。主に文化、芸術、博物館の分野で活動しており、展覧会やインスタレーション、その他のストーリーテリングのためのメディアを制作しています。特に体験デザインとインタラクティブな物語性に重点を置き、観客の印象を導き、象徴的かつ感情的な層を引き出すことを重要視しています。Gdybyは、ポーランド国内外の著名な文化機関と協力して多数のプロジェクトを手がけています。
複雑系の研究者であり、インタラクションデザイナー。ワルシャワ大学に勤務し、AIの開発が人間の認知能力を低下させない方法などを研究している。アートの分野での活動の指針となるコンセプト兼マニフェスト「Matter of Code(コードの問題)」の提唱者であり、物理的なマターとデジタルマターの組み合わせから生じる創発的な特性を探求している。ヴェネツィア・ビエンナーレ国際美術展ポーランド館の展示コンペティションでファイナリストに選出。さらに、システミックリスク分析センターおよびシンクタンク「Re-Imagine Europa」のフェローでもある。
自身の想いを植物として映し出せる本インスタレーションは、来館者を薬草の世界へ誘います。 来館者が展示を前にさまざまな選択をすると、それに対応する媒介変数をアルゴリズムが処理し、その人だけの心象の緑として半透明のスクリーンに映し出します。この華やかな映像も周りと一体となって、かつて薬草も重用された儀式や信仰を彷彿とさせる儚く幻想的な空間を演出します。 空間を共創した来館者たちはその記念として、自身の心を表現した薬草を、電話にダウンロードしたりSNSで共有したりできます。
本インスタレーションは、ポーランドの絵画表現の伝統にも根差した標本アニメーションにより、ポーランドで愛用されてきたハーブを紹介します。 ポーランドと日本では、古来より早春に貴重な栄養源として、種類こそ異なるものの、七草が食されてきました。両国共通の伝統である七草粥に着想を得て紹介される薬草や香草などには、魔力が宿ると信じられてきました。その信仰も一部は科学的に証明され、徐々にその作用が解明されています。
本インスタレーションは、生物学の知見をもとに、かつてない芸術手法を用いて、ポーランドの自然の移ろいを象徴的に表現します。 ポーランドで育つ植物のつかの間の変容を、樹脂の玉に閉じ込めます。慌ただしい日常の中で忘れられるような小さな変化を捉えたこの透明な球は、はかない生命もたゆまず活動していることを教えてくれます。インスタレーション内容はSNSで共有でき、バイラル効果で広がっていきます。
人工知能を駆使した本インスタレーションは、ポーランドの風景をパノラマ画面に生成し、その本質と多様性を来館者に伝えます。 これらの風景は、来館者の画面前での動きに応じてゆっくりと変化さらには変容していきます。一人ひとり、あるいは集団の動きをまるで詩のように捉えて風景が生成されるのです。 ポーランド各地で撮影された写真数千枚で「訓練」を受けたAIは、ポーランドの風景の本質を表現した架空の景観を生成します。
雲は、ポーランド各地の手工芸の伝統に見られる「パヨンキ」(クモ)と呼ばれる民俗装飾を指します。これらは祝祭の時期に共同で作られ、家庭に幸運をもたらし、邪悪なものから家を守るために用いられてきました。この色鮮やかな民俗的な形が、この立体的なインスタレーションを生み出すインスピレーションとなりました。パビリオンの窓と一体化した雲は、外からも魅力的な景観を提供し、当初の目的と同様に、ユニークな装飾としての役割を果たしています。
この没入体感型のインスタレーションは、昔ながらの木造流下式製塩設備(グラディアヴェルク)を模して構成されており、地域社会の健康と福祉の増進を意識しています。音と光の世界に浸る来館者を、内省と瞑想に導き、安らぎの中で精神を整えます。
素朴な素材から伝統工芸で作られた不思議な楽器が、情報技術を駆使し、著名な作曲家および演奏家であるイェジー・ロギェヴィチの手を介し、民俗音楽や自然の音に着想を得たフリデリク・ショパンの名曲の神髄を奏でます。 この楽器「オーラ」では、百以上の独立したモジュールが、デジタル制御されながらオーケストラのように一体となって、自然の素材から音を奏でます。個々のモジュールは、ショパンの生家付近で育ち、彼を象徴する柳の欠片から作られています。来館者は、体を動かしながら人工知能を介してオーラの動きに反映させ、この演奏を共創することができます。
ポーランドパビリオン内の「創意の園」は、日本市場向けの6つの主要分野において、持続可能な未来を形作るアイデアや画期的なイノベーションを紹介するゾーンです。ここでは、ポーランドの経済、ビジネス、科学を紹介し、伝統的な自然に由来するソリューションだけでなく、現代のテクノロジーや高度なアルゴリズムに基づいた発明も見ることができます。各業界のイノベーションを推進しつつ新たな可能性を提示し、持続可能なアプローチを推進することにより、健全な社会に向けて取り組んでいます。これらに共通するのは、ポーランドの「創造性遺伝子」です。企業が開発するソリューションは、自然のパターンとテクノロジーの力、最新の発見と科学的知識の全てを活用しています。その結果、人々はより健康で、より安全で、より平和な生活を送ることができるようになり、また、前世代では達成できなかった方法で周囲の環境を形作ることを可能にします。
半年にわたる万博でポーランドパビリオンを訪れる人々への感謝の印として、その一人一人から生成される心象の緑を繋ぎ合わせることで、伝統と未来のつながりを表現し、みんなの作品として一つにまとめます。そして、先端技術を駆使するポーランド人の創造力を披露します。
俳句の表現形式に倣い、パビリオンの提示内容についてポーランドの若き詩人たちが小さな札に想いをしたためました。パビリオンに散りばめられた彼らの詩を通して、展示と対話ができるようになっています。パフォーマンスホールの入口では、詩を印刷した紙札が壁一面を覆っています。来館者はよりよい社会を共に築くためのヒントにすべく、これらを自由に持って帰ることができます。
パビリオンの手前には、ワルシャワのワジェンキ公園で催されている野外コンサートを彷彿とさせる「やどり」が設けられ、演奏を無線イヤホンで聴きながら、偉大なフリデリク・ショパンの名曲に浸ることができます。